★仕組み化★中小企業のファイル共有(運用ルール編)

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★仕組み化★
「仕組み化」や「業務フロー設計」に関する何でもありのコーナー

「在宅ワークをしたくても、うちの会社は各自のパソコンにデータを保存しているからなぁ…」

緊急事態宣言で再びリモートワークが推奨されるなか、業務で使用するデータファイルを共有して
いなかった中小企業の「初めてのファイル共有」をテーマにしています。
「基礎知識編」では導入が手軽なオンラインストレージを検討する知識について、「アクション編」
では導入に向けた具体的なアクションをどうとるかに触れました。

3部構成の最後となる「運用ルール編」では、ファイル共有する場合に対応が抜けがち、でも社内
で機能を活用するには欠かせない運用ルール作りのコツをお伝えします。

 

運用ルールとは


ひと昔前に比べてデータ通信の技術が格段に進歩して、提供されるオンラインサービスも選択に
迷うほど充実しています。
しかしこれらは道具であって、どの道具を使って、どうやって仕事の効率アップにつなげていくか
は、日々の運用にかかってきます。

この運用で必要になってくるのが、自社の業務内容にあった「運用ルール」です。
これまで各担当者のデスクトップに業務のデータファイルが置かれている場合は、担当者が個人
的に「どこに、何の情報があるか」を把握していれば大きな問題はありませんでした。

しかし全員が同じ場所に業務のデータファイルを置くとなると、大量のデータをどう探しやすく
管理するか一定のルールが必要になります。
もしルールがないと、このような状況が起こるかもしれません。

 


■何もルールがない場合■

佐藤さんが担当の顧客情報は共有スペース直下の「顧客ファイル」フォルダにしまってある
鈴木さんが担当の顧客情報は「鈴木」フォルダ内の「お客様データ」フォルダに入っている
斎藤さんが担当の顧客情報は斎藤さんの個人パソコンのデスクトップに置かれたまま

佐藤さん・鈴木さん・斎藤さん3人がリモートワーク中に、山田社長が会社でお客様の情報
のデータファイルを確認しようとしました。
するとどこを見たら目当てのお客様の情報があるか見つけることができませでした。
仕方なく山田社長は3人それぞれに、電話でお客様の情報が記載されたデータファイルの
在りかを確認することになりました。

 

これだと経営者の山田社長の時間をお客様情報の検索に無駄につかってしまい、積もり積もると、
本当に必要な売上アップの対策を考える経営の仕事に支障が出てしまいます。
例えばこのケースだと、以下のようになっていたらどうでしょう。

 


■運用ルールがある場合■

各担当者が担当の顧客情報は、共有スペース直下の「顧客情報」フォルダ内に「正式顧客名」
アイウエオ順でしまっておく運用ルールになっている

佐藤さん・鈴木さん・斎藤さんは運用ルールに従って顧客情報を管理していて、山田社長も
ルールに沿って必要なお客様の情報を探すことができました。

 

これなら全担当者の顧客の情報が、「顧客情報」フォルダ内に「正式顧客名」アイウエオ順でしま
われていることになります。
山田社長がお客様の情報を確認したいと思ったら、「顧客情報」フォルダにアクセスして、アイウエ
オ順に並ぶ「正式顧客名」から目当ての会社名を探してデータを見れば、すぐに確認できます。

このように、みんなが守る社内の決まりごと・マナーとして「顧客情報はどのフォルダに、どんなフ
ァイル名称でしまっておくか」など方法を決めたものがファイリングの「運用ルール」です。
全員が同じ場所にいないリモートワークでは、「運用ルール」を作って誰もがわかる方法で情報共有
すると仕事を進めやすくなります。

 

必要な運用ルール例


では、リモートワークをスムーズに進めるにはどのような運用ルールがあると便利でしょうか?

業務のデータファイルを関係者で共有するには、業界や業務の内容により変わるものの、次のよ
うな原則があるとスッキリします。

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Step1:データをしまう切り口を決める
これはある業務に関するファイルを探す場合、どんな探し方をするかの方法です。
例えば以下の質問と回答の内容が該当します。

質問者「どのように必要なデータを見つけていますか?」
回答者「みんなよくお客様の企業名から探していきます」

上記の回答であれば、企業名を切り口にしたフォルダでしまっていくと、みんなが探しやすい
方法になります。
なお企業のファイリングでは、大きく以下の2つの軸で分ければ、だいたい収まります。

案件別:企業ごとの仕事や、発注があって進行している案件ごとにまとめる
内容別:総務の文書のような文書の帰属先、見積書のような文書が記す内容ごとにまとめる

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Step2:並び順を決める
フォルダやファイルをしまう場合に、どんな並び順で整理をしていくかです。
誰もがわかりやすい並び順は「古いものから、新しいものへ」が基本になります。

古→新:時間の流れや、作業の流れのように進行する順番で並べる

 

Step3:階層を決める
情報量が多い場合に、フォルダの中にさらにフォルダをつくって分類する階層の作り方です。
階層は「大きなものから、小さなものへ」が基本になります。
例えば会社の規模でおおまかにフォルダ分類して、さらに次の階層で会社名ごとに細かく分ける
方法が、大きな分類から小さな分類へとなります。

大→小:カテゴリの細分化、重要度の大きさ、関連性の深さなどの順番で階層にする

 

Step4:フォルダ名のつけ方を決める
フォルダ名を付けるには一定の規則性をもたせておきます。
その際に頭に数字やアルファベットを入れると、並べ替えをしやすく、分類しやすくなります。

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Step5:ファイル名のつけ方を決める
データのファイル名についても、名称にどんな内容を含めるか決めておきます。
例えば「締結日_契約署名(締結先)」のように要素を固定します。
特に最新版の情報参照が重要な場合は、ファイル名内に日付を入れると便利です。
日付はファイル名の冒頭と最後に入れるケース両方がありますが、経験的に以下のような使い
分けをすると探しやすいです。

前日付
ファイル内容の更新が頻繁に行われて、最新版の内容が重要な場合にオススメ

後日付
ファイルの種類ごとに資料を見つけて、次に対象の日にちを特定する場合にオススメ

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運用ルール作りのコツはいかがでしたでしょうか。
ご紹介したStep1~5までのステップはほんの一部ですが、データを共有スペースへ移動する前
にルールの大枠を作っておくと整理しやすくなります。

ご自身で事業を始めて、事業の成長に伴って増員した経営者の方だと、運用ルールを作って仕事
をすることはあまりなかったかもしれません。
これは個人事業主を卒業して、従業員と一緒に部や課のような組織を作って仕事をしていくため
のマネジメントノウハウでもあります。

実は今回の3部構成のブログのきっかけは、これからITを活用する中小企業が、「オンラインスト
レージを使ってみよう!」とネットで検索しても、IT初心者がわかる言葉・文章でまとめたサイト
が見つからなかったことでした。

さらに「基礎知識編」や「アクション編」の内容が出てきても、使いこなすのに欠かせない「運用
ルール編」の内容はほぼ出てきません。
しかしITの活用で導入時にかけた手間と費用+維持費用を上回ってメリットを得るには、事前に
運用ルールの設定も大切だとイメージをつかんでいただけたと思います

このブログの内容はごく一部の抜粋で、業務や社内の状況により実際の導入は各社異なります。
万が一、身近によい相談先が見つからなくて引き続きお困りの場合は、お問い合わせフォームか
らご連絡ください。
社会情勢の変化を、次の成長機会へ変えるお手伝いをいたします。