★仕組み化★中小企業のファイル共有(基礎知識編)

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★仕組み化★
「仕組み化」や「業務フロー設計」に関する何でもありのコーナー

「在宅ワークをしたくても、うちの会社は各自のパソコンにデータを保存しているからなぁ…」

急遽の緊急事態宣言の発令で、再び在宅ワークやリモートワークがピックアップされています。
新型肺炎の感染者の増加をみると、これまでリモートワークに対応していなかった中小企業の
経営者で対応に悩んでいる方は多いのではないでしょうか。

課題の一つに、業務で使用するデータファイルが社内で共有されていないケースがあります。
これまでは同じ職場で、対面で会話をしながら情報の確認ができたから、担当者のパソコン内
にデータがあっても仕事ができていました。

しかしリモートワークとなると、オフィス以外の場所から業務で使うデータファイルがしまって
ある場所へオンラインでアクセスして、仕事を進めてもらう必要があります。
この「業務で使うデータファイルがしまってある場所」を設定して、社内で仕事の情報を共有
することを「ファイル共有」といいます。

シクミカが主に支援しているのは、ファイル共有をうまく活用してみんなで仕事を効率的に進め
たり、リモートワークをスムーズにするファイリングルールや運用の手順づくりです。
しかし前段階のファイル共有で「どんな対策をしたらよいか」とお悩みのお話も多く、中小企業が
ファイル共有を理解するための「基礎知識編」、導入に向けた「アクション編」、そして抜けがち
だけど重要な「運用ルール編」と3つに分けてまとめてみました。

ITに関する用語はなるべく一般的な言葉に置き換えて、解説するように心がけています。
お困りの経営者さんに少しでも参考になれたら幸いです。

 

検討ツール


ファイル共有に最も手頃な方法として検討されるのが、「オンラインストレージ」や「クラウドスト
レージ」と呼ばれるネットサービスの活用です。
これはインターネット上にデータを保存できるスペースを契約するサービスになります。
オンラインストレージへデータファイルを保存すれば、複数の人とファイルを共有したり、パソコン
以外にスマートフォンやタブレット(これらをデバイスといいます)からファイルを参照したりする
ことができます。

他にはNAS(ナス)と呼ばれる大容量のハードディスクをネットワークでつないでファイルを置く
方法や、自社でファイルサーバーを設置する方法があります。
ただこれらはシステム会社に依頼しないと難しく、社内のネットワーク環境を整える必要もあって、
オンラインストレージの導入に比べて時間と予算がかかります。

そこで今回は、従業員にデータファイルを共有する仕事の仕方に慣れてもらうことも考え、導入の
ハードルが低いオンラインストレージをメインにお伝えしてまいります。

 

各サービスとプランがわかりにくい理由


オンラインストレージをネットで検索すると様々なサービスがでてきて、それぞれの違いや、自社に
とってどれがよいサービスか頭にさっぱり入ってこないものです。
よくわからなくて混乱するには以下の理由が考えられます。

 

理由1)グループウェアとオンラインストレージの関係性がわかりにくい
初めて導入を検討する場合、グループウェアとオンラインストレージの話がごちゃ混ぜになって、
とてもわかりにくい解説になっていることがあります。
グループウェアとは、企業や組織内で情報共有やコミュニケーションを効率的にできるようにする
機能を各種取りそろえたサービスです。
例えば以下のような機能を用意しているもので、具体的なサービス名称では「Microsoft 365」や
「Google Workspace」があげられます。

 

・スケジュール管理:みんなのスケジュールを共有
・勤怠管理:社員の出勤や休暇の状態を共有
・ファイル共有:仕事で使うデータファイルを集約・共有
・オンライン会議:画像と音声で非対面でも会議開催
・掲示板:関係者が必要なお知らせをわかりやすい場所へ掲示して共有
・チャット:離れた場所にいる人と会話をするようにやりとり
・ワークフロー管理:承認や決済をもらうための申請ルートと進捗を管理 など

 

わかりにくいのは、オンラインストレージに該当する「ファイル共有」の機能が、グループウェア
で提供される機能のひとつに含まれている場合があるからです。
ただしファイル共有にも様々な仕様があり、グループウェアに含まれるファイル共有の機能が、自
社の業務に適しているとは限りません。
またグループウェアの導入は事前設定が複雑で、初めてファイル共有を考える企業には少し扱い
にくいところがあります。
事前に自社の業務に必要な機能を確認して、グループウェアの機能が過剰なら、シンプルにファ
イル共有に特化したオンラインストレージだけのサービスを選ぶとよいでしょう。

 

理由2)様々なプランがありすぎる
オンラインストレージのサービス提供方法には、大きく個人用と法人用(ビジネス用と表現されて
いる場合もあります)があります。
主な違いは「セキュリティのレベルの高さ」や「人により“データの参照だけ”や“編集まで可能”を
指定できるアクセス権限の設定のしやすさ」などにあります。
さらに各サービスではこの個人用と法人用の他に、ユーザー数、データ容量、利用できる機能が
どこまでか、を細かく設定した料金プランが多数用意されています。
プランの契約には「最低ユーザー数3名」のような利用条件もあって、これがまた各社様々です。
初めて導入を考える企業が戸惑うのも無理はありません。
ひとまず社内のファイル共有であれば法人用のプランを選択して、利用人数やデータ容量、料金、
その他必要な機能の順に考えていくと選びやすくなります。

 

よく聞くオンラインストレージサービス


では次に、よく耳にするオンラインストレージサービスをいくつかをご紹介します。
これ以外にも提供されているサービスは数多くあるため、機能や特徴を確認するきっかけとして
活用していただき、実際には自社の業界や業務内容、従業員と一緒に試した使い勝手をもとに導
入するサービスを決定する方法をお勧めいたします。

※各サービスの内容やリンクは2021年1月時点の情報です

1)Googleドライブ
Googleが提供するオンラインストレージです。
法人用としては、Gmail、カレンダー、オンライン会議のMeetといった機能がセットになっ
たグループウェア「Google Workspace(旧G Suite)」に契約して、機能のひとつとして利
用するプランが推奨されています。
ファイルを検索で探しやすいと好評な一方、自社の業務でExcelやWordの利用が多い場合
は、Googleドライブ内で新たに文書を作成するソフトがGoogoleスプレッドシートやGoogle
ドキュメントになる変更点があります。

 

Google Workspace各種プラン
https://workspace.google.co.jp/intl/ja/pricing.html

 

2)SharePoint Online
「SharePoint Online」はMicrosoftが提供するオンラインストレージです。
法人用としては、最新のOfficeソフトやオンライン会議のTesmsといった機能がセットに
なったグループウェア「Microsoft 365(旧 Office 365)」に契約して、機能のひとつ
として利用するプランのコスパが良いといわれています。
ただ、わかりにくいのはもうひとつ「One drive」というオンラインストレージサービス
があり、「SharePoint Online」との使い分けがやっかいです。
「One Drive」は個人データを保存するオンラインストレージであり、全社でファイル
共有をするオンラインストレージとしては「SharePoint Online」が該当します。
ExcelやWordの利用が多い場合は、同じMicrosoftが提供するサービスで相性が良く、
企業間のデータのやり取りがスムーズです。
一方で「One drive」と「SharePoint Online」の違いや解説の用語がわかりにくく、
事前設定も大変で、販売代理店やシステム会社へ依頼しないと導入は大変です。

 

Microsoft 365各種プラン
https://www.microsoft.com/ja-jp/microsoft-365/business/compare-all-microsoft-365-business-products#

 

3)box
日本でも大手企業で導入実績が多い、ファイル共有に特化したオンラインストレージです。
法人向けには4つのプランが用意されています。
Boxの良さは直感的に利用できる操作性のよさと、大手企業も利用するセキュリティレベ
ルの高さです。
ただ導入は販売代理店を経由してで、オンラインで申し込みができるサービスより利用
開始まで少し時間を要します。

 

box各種プラン
https://www.box.com/ja-jp/pricing
※Webサイトからの申し込みは、Box米国法人との直接取引となり、画面が英語版となるため注意が必要です。導入相談やトライアルは、下記の日本国内の販売代理店へお問い合わせとなります。

日本での販売代理店
https://www.box.com/ja-jp/partners/channel-program

 

4)dropbox
Dropbox社が提供する、ファイル共有のみに特化したオンラインストレージです。
企業で3ユーザー以上が利用する場合に、2つの法人用プランが用意されています。
中小企業では導入がしやすく多く実績がありますが、ファイルのアップロード・同期
の時間がやや遅いという声や、また「複数の人が同じデータファイルを同時に編集した
場合に、dropboxが自動的にファイルをコピーで追加作成してしまう仕様(競合コピ
ー)」で最新版ファイルのわかりにくさを指摘されています。

 

dropbox各種プラン
https://www.dropbox.com/plans

 

5)どこでもキャビネット
大塚商会が提供するオンラインストレージです。
dropboxの競合コピーでお困りの場合は、こちらだと同時編集ができない仕様となっています。
日本国内の企業向けに作られた使いやすいサービスでコールセンターが設置され、支払方法も
複数から選択できます。
ファイル共有機能がメインですが、使わなくても名刺管理機能が必ずセットついてきます。

 

どこでもキャビネット各種プラン
https://webdirect.tanomail.com/dococab/

 

ここまでオンラインストレージを検討する場合の基礎知識をまとめました。
なお「よく聞くオンラインストレージサービス」にあるサービスの情報は、20201年1月時点のもの
になります。
オンラインストレージのサービスは仕様や料金プランで改変が激しく、実際に導入を検討する時期
に改めてサービス提供各社のホームページを確認して、最新情報をチェックください。

次の「アクション編」では、実際に導入に向けて緊急事態宣言下でどう段取りを進めていくかをお
伝えします。